平成19年12月21日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成17年(ワ)第15151号 損害賠償等請求事件(以下「第1事件」という。)
同年(ワ)第15738号 損害賠償等請求事件(以下「第2事件」という。)
同年(ワ)第23436号 手帳返還等請求事件(以下「第3事件」という。)
口頭弁論終結日 平成19年9月21日
判決
当事者の表示 別紙当事者目録記載のとおり
主文
1 被告講談社及び被告出樋は,原告ら各自に対し,連帯して220万円及びうち110万円に対する平成17年7月25日から,うち110万円に対する同年8月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を,うち110万円及びこれに対する同年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員については被告矢野と連帯して支払え。
2 被告矢野は,原告ら各自に対し,被告講談社及び被告出樋と連帯して,110万円及びこれに対する平成17年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告講談社及び被告出樋は,原告らに対し,別紙謝罪広告1記載の謝罪広告及び同謝罪広告2記載の謝罪広告を,被告講談社発行の週刊誌「週刊現代」に,別紙掲載要領記載の要領で各1回掲載せよ。
4 被告矢野は,原告らに対し,別紙謝罪広告3記載の謝罪広告を,被告講談社発行の週刊誌「週刊現代」に,別紙掲載要領記載の要領で1回掲載せよ。
5 原告らの被告らに対するその余の請求及び被告矢野の原告らに対する請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は,第1事件ないし第3事件を通じ,これを5分し,その2を原告らの負担とし,その1を被告講談社及び被告出樋の負担とし,その余を被告矢野の負担とする。
7 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1 請求
1第1事件
(1)被告らは,原告ら各自に対し,連帯して1000万円及びこれに対する平成17年7月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被告講談社及び被告出樋は,原告らに対し,別紙謝罪広告4記載の謝罪広告を,被告講談社発行の週刊誌「週刊現代」に,別紙掲載要領記載の要領で1回掲載せよ。
(3)被告矢野は,原告らに対し,別紙謝罪広告5記載の謝罪広告を,被告講談社発行の週刊誌「週刊現代」に,別紙掲載要領記載の要領で1回掲載せよ。
2 第2事件
(1)被告らは,原告ら各自に対し,連帯して1000万円及びこれに対する平成17年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)被告講談社及び被告出樋は,原告らに対し,別紙謝罪広告6記載の謝罪広告を,被告講談社発行の週刊誌「週刊現代」に,別紙掲載要領記載の要領で1回掲載せよ。
(3)被告矢野は,原告らに対し,別紙謝罪広告7記載の謝罪広告を,被告講談社発行の週刊誌「週刊現代」に,別紙掲載要領記載の要領で1回掲載せよ。
3 第3事件
(1)原告らは,被告矢野に対し,別紙物件目録記載の手帳及び関連資料を引き渡せ。
(2)原告らは,被告矢野に対し,それぞれ1000万円及びこれに対する平成17年5月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
第1事件は,原告らが,被告講談社発行の週刊誌「週刊現代」(以下「本件週刊誌」という。)に掲載された,原告らが被告矢野の自宅から被告矢野が極秘事項をメモしていた手帳を持ち去った,原告らは家探しをしていったとする記事により名誉を毀損されたとして,それぞれ,被告らに対し,共同不法行為に基づき,1000万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日である平成17年7月25日(同記事が掲載された本件週刊誌の発売日)以降の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに,謝罪広告の掲載を求めている事案である。
第2事件は,原告らが,「上記手帳は無理矢理持ち去られたものであり,上記記事の内容は真実である」旨の被告矢野のコメントを内容とする本件週刊誌の記事により名誉を毀損されたとして,それぞれ,被告らに対し,共同不法行為に基づき,1000万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日である平成17年8月1日(同記事が掲載された本件週刊誌の発売日)以降の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めるとともに,謝罪広告の掲載を求めている事案である。
第3事件は,原告らが,被告矢野所有の手帳及び関連資料を強奪した上,被告矢野の自宅を家探ししてプライバシーを侵害したとして,被告矢野が,原告らに対し,所有権に基づき,上記手帳及び関連資料の返還を求めるとともに,不法行為に基づき,原告らに対し,それぞれ1000万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以後の日である平成17年5月30日以降の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。
1 前提となる事実
(1)原告ら
ア 原告大川は,昭和34年から同38年まで墨田区議会議員,同年から同55年まで東京都議会議員,同年から同61年まで参議院議員を務め,同45年から同61年まで公明党中央執行委員の地位にあった。
イ 原告伏木は,昭和38年から同42年まで神奈川県議会議員,同年から平成5年まで衆議院議員を務め,昭和62年から平成2年まで公明党副委員長の地位にあった。
ウ 原告黒柳は,昭和40年から平成7年まで参議院議員を務め,同5年から同7年まで公明党副委員長の地位にあった。
(2)被告ら
ア 被告講談社は,雑誌及び書籍の出版等を目的とする株式会社であり,本件週刊誌を発行している。
イ 被告出樋は,週刊現代の編集人である。
ウ 被告矢野は,昭和38年に大阪府議会議員となり,同42年から平成5年まで衆議院議員を務め,昭和42年に公明党の書記長に就任し,同61年から平成元年まで同党中央執行委員長の地位にあった。
被告矢野は,衆議院議員を引退した後,政治評論家として活動している。
(3)原告らは,平成17年5月15日に2回,同月17日及び同月30日に各1回,合計4回にわたって被告矢野の自宅に赴き,被告矢野所有の別紙物件目録記載の手帳及び関連資料(以下,この手帳を「本件手帳」といい,関連資料と併せて「本件手帳等」という。)を持ち帰った。
(4)被告講談社及び被告出樋は,平成17年7月25日発売の本件週刊誌同年8月6日号に,原告らが被告矢野の自宅から被告矢野の手帳等を持ち去った,原告らは家探しをしていったとする別紙第1記事のとおりの記事(以下「第1記事」という。)を掲載した(甲1)。
(5)原告は,同年7月26日,第1事件の訴訟を提起したところ・被告講談社及び被告出樋は,同年8月1日発売の本件週刊誌同月13日号に,原告らは,被告矢野が強い抗議をしたにもかかわらず,被告矢野の手帳等を無理矢理持ち去ったものであり,第1記事の内容は真実である旨の被告矢野のコメントを内容とする別紙第2記事のとおりの記事(以下「第2記事」といい,第1記事と併せて「本件各記事」という。)を掲載した(甲2)。
2 争点及びこれについての当事者の主張
(1)第1記事による名誉毀損
(原告らの主張)
第1記事は,原告らが,共謀の上,被告矢野の自宅において,被告矢野に,被告矢野が極秘メモを記載していた衆議院手帳等を引き渡すよう強要し,本棚,押し入れ,妻の部屋に至るまで家探しし,被告矢野の衆議院手帳100冊を10箱近い段ボール箱に詰めて被告矢野から奪い,これを持ち去ったとの事実を摘示したものである。
このような内容の第1記事は,一般読者に対し,原告らが犯罪行為又はこれに準ずる行為を行ったとの印象を抱かせるものであり,原告らの名誉を毀損するものである。
(被告講談社及び被告出樋の主張)
第1記事が原告らの社会的評価を低下させることは認め,その余は争う。
(被告矢野の主張)
原告らの主張事実は認める。
(2)第2記事による名誉毀損
(原告らの主張)
第2記事は,原告らが,4回にわたって被告矢野宅を訪問し,その都度,執拗かつ強い要求をし,被告矢野が「プライバシーの侵害になる」と強い抗議をしたにもかかわらず,2回にわたって家探しを強行するなどして,被告矢野の手帳等を無理矢理に持ち去り,これを強奪したとの事実を摘示したものである。
このような内容の第2記事は,一般読者に対し,原告らが,強要,恐喝又は強盗等の犯罪行為によって,被告矢野から手帳等を奪い取うたとの印象を与えるものであり,原告らの名誉を毀損するものである。
(被告講談社及び被告出樋の主張)
第2記事は,被告矢野の手帳が被告矢野の意に反して持ち出されたとの事実を摘示したものであり,これが原告らの社会的評価に触れることは認め,その余は争う。
(被告矢野の主張)
原告らの主張事実は認める。
(3)被告矢野の責任
ア 第1記事について
(原告らの主張)
第1記事は,被告矢野が,被告講談社に情報を提供したものであった。第1記事中の「矢野氏と同世代の元公明党幹部X氏」は被告矢野にほかならず,「黒革の手帖」あるいは「衆議院手帖」という事実,殊に,「大きな事件が起きたときや,政局が動いた年は何冊も使っていたので,合計100冊以上にのぼる」との事実は,被告矢野以外には知りようのない事実である。このような第1記事の内容のほか,相当性を主張しない被告講談社及び被告出樋の態度等からしても,第1記事の情報源が被告矢野であることは明らかである。
したがって,被告矢野には,同記事による原告らの名誉毀損について,原告らに対し,被告講談社及び被告出樋とともに共同不法行為の責任がある。
(被告矢野の主張)
被告矢野は,第1記事の作成に関与していない。被告矢野は,原告らの行為に憤慨しており,話の通じる人にてん末を話をしたことがある。しかし,その話が被告講談社に伝わったか,どのようにして伝わったかは知らない。
イ 第2記事について
(原告らの主張)
被告矢野は,被告講談社から,原告らによる第1事件の訴え提起についてコメントを要請され,コメントの内容を自ら読み上げた。
ある者の情報提供に基づく記事が人の名誉を毀損する場合において,当該情報提供者が,自らの提供する情報が報道されることを認識し,これを容認していたときは,不法行為責任を負うというべきところ,被告矢野は,自らのコメントを内容とする記事が本件週刊誌に掲載されることを認識,認容していたばかりでなく,積極的に意図して虚偽の情報を提供し,記事の作成に深く関与したものであり,第2記事について不法行為責任がある。
(被告矢野の主張)
情報提供者に対して不法行為責任を問うためには,取材に対する事実の摘示や評論,意見を述べる行為が虚偽であることを知りながらあえてされるなど,取材当時,情報提供者が置かれた立場を考慮してもなお相当でないことが明らかであり,情報提供者が,自らの発言内容がそのまま雑誌等に掲載されることについて了解した上,あえて第三者の名誉を毀損するような事実の摘示や論評,意見を述べたという特段の事情が存在することを要すると解すべきであるところ,被告矢野による第2記事のコメントについては,これらの要件に欠け,被告矢野には,第2記事について不法行為責任はない。
(4)真実性の抗弁
ア 第1記事について
(被告講談社及び被告出樋の主張)
第1記事は,元公明党委員長という要職にあった被告矢野が多くの政治的秘密を綴った被告矢野の手帳を巡る,政権与党の一翼を担う公明党及びその支持母体である創価学会内部の騒動を報じたものである。これらの内容は国民の関心事で,公共の利害に関する事実に関わるものであり,被告講談社及び被告出樋は,専ら公益を図る目的で第1記事を本件週刊誌に掲載したものである。そして,原告らが被告矢野の意思に反してその手帳を持ち出したとの摘示事実,原告らが被告矢野宅の本棚,押し入れから妻の部屋に至るまで家探ししていったとの摘示事実はいずれも真実である。
(原告らの主張)
原告らが,手帳を渡すように被告矢野を脅迫,強要したり,被告矢野宅を家探ししたり,被告矢野の手帳を強奪した事実はない。被告矢野は,自ら進んで手帳等を原告らに引き渡したものであり,第1記事の摘示事実は虚偽である。
イ 第2記事について
(被告講談社及び被告出樋の主張)
第2記事は,政権与党の一翼を担う公明党及びその支持母体である創価学会内部における元公明党委員長という要職にあった被告矢野に対する訴訟提起及びこれに対する被告矢野の反論を報じたものである。これらは,国民の関心事で,公共の利害に関する事実に関わるものであり,被告講談社及び被告出樋は,専ら公益を図る目的で,第2記事を本件週刊誌に掲載したものである。そして,原告らが被告矢野の意思に反して手帳等を持ち出したとの摘示事実,原告らが被告矢野の強い抗議にもかかわらず,家探しを2回にわたって強行したとの摘示事実はいずれも真実である。
(被告矢野の主張)
第2記事は,政権与党を構成する公明党の元委員長という要職にあった被告矢野に対して訴訟が提起されたことを報じるとともに,訴訟の対象とされた第1記事が真実であることを被告矢野が述べたと報じるものであり,その報道が国民の関心事であり,公共の利害に関するものであること,報道目的が専ら公益を図ることにあったことは明らかである。そして,被告矢野が原告らから脅迫,暴行を受け,手帳等を強取されたとの摘示事実,原告らが被告矢野の強い抗議にもかかわらず,家探しを2回にわたって強行したとの摘示事実はいずれも真実である。
(原告らの主張)
原告らが,手帳等を渡すよう被告矢野を脅迫,強要したり,被告矢野宅を家探ししたり,被告矢野の手帳を強奪した事実はなく,第1記事の摘示事実は虚偽である。被告矢野は,自ら進んで手帳等を原告らに引き渡したものである。
(5)第1事件及び第2事件の損害額
(原告らの主張)
上記被告らの各不法行為により,原告らの社会的評価は著しく低下し,原告らは多大な精神的苦痛を被った。
第1記事及び第2記事は,ねつ造された虚構の記事であり,被告講談社及び被告出樋においても,これを認識し,又は容易に認識することができたものであり,被告らの行為は悪質である。
被告講談社及び被告出樋は,第1記事において情報提供者が被告矢野であることを隠ぺいした上,情報提供者をねつ造し,さらに,第2記事により再び虚偽の事実を公表し,原告らの提訴を揶揄し,嘲笑している。これらに加え,本件各記事の内容,本件週刊誌の社会的影響力,被告講談社が得た利益,原告らの受けた被害の内容,被告矢野は本人尋問において虚偽の供述をしていることなどを考慮すると,被告らの上記不法行為による原告らの損害額は,弁護士費用分の損害を含めて,原告ごとに,第1事件につきそれぞれ1000万円,第2事件につきそれぞれ1000万円を下らない。
(被告らの主張)
原告らの主張は争う。
(6)謝罪広告
(原告らの主張)
上記のとおり,被告らの不法行為は悪質であり,また,本件週刊誌が大きな社会的影響力を有していることにかんがみると,これらの記事により低下した原告らの社会的評価を回復させるためには,金銭賠償のみでは足りず,謝罪広告が必要である。その内容は,@第1記事については,被告講談社及び被告出樋につき別紙謝罪広告4のとおりの謝罪広告,被告矢野については別紙謝罪広告5のとおりの謝罪広告,A本件第2記事については,被告講談社及び被告出樋につき別紙謝罪広告6のとおりの謝罪広告,被告矢野については別紙謝罪広告7のとおりの謝罪広告がそれぞれ相当であり,これらを別紙掲載要領記載の要領により掲載することを命じる必要がある。
(被告らの主張)
原告らの上記主張は争う。
(7)原告らの不法行為及び本件手帳等の返還請求について
(被告矢野の主張)
ア 原告らは,平成17年5月15日,同月17日及び同月30日,被告矢野宅を訪問し,被告矢野に,本件手帳等を出すよう強要し,被告矢野の意思に反してこれを奪い,持ち去り,本件手帳等を強奪した。
イ また,原告らは,同年5月17日及び同月30日,被告矢野の意思に反して被告矢野宅内を家探しして検分し,被告矢野のプライバシーを侵害した。
(原告らの主張)
ア 被告矢野は,平成5年9月以降,文藝春秋に,「極秘メモ全公開」と題する,党の書記長,委員長時代のぼう大な資料とメモに基づくと称する手記を公表していたところ,平成17年4月28日付の聖教新聞には,被告矢野は,創価学会の副理事長らとの面談の席で,上記記事によって支持者に迷惑を掛けたことを謝罪したとの話が紹介された。
このような経緯のもとで,被告矢野は,今後,本件手帳等を利用するつもりはないとし,原告ら立会いのもとで処分したいとの意向を示したことから,被告矢野と原告らとの間で協議した結果,被告矢野が,本件手帳等を封印した上で原告らに交付し,以後,原告らがこれを保管・管理することになった。
被告矢野は,本件手帳等を原告ら立会いの下で処分する,これを使う気はないし,自分のもとに残っても’ろくなことはなく,万一これを原告らの立会いの下で見ることはあっても,これを持って帰ることはない,自分の死後は燃やしてくれと述べ,「被告矢野が利用しないことを約して原告らに交付し,以後,原告らがこれを保管・管理すること」を約する内容の2通の念書を作成し,原告らとの間で,その内容の合意をした上,本件手帳等を原告らに引き渡した。
イ 上記合意は,被告矢野が公明党やその関係者に迷惑をかけることがないよう,本件手帳等を利用できない状態に置くことを目的としたもので,本件手帳等の負担付贈与ないし信託的譲渡あるいは信託の設定とみるべきであり,これにより,本件手帳等の所有権は原告らに移転し,被告矢野はその所有権を喪失した。
また,原告らは,上記のような目的のもとに締結された無名契約である上記合意により,本件手帳等を保持する権原を取得したというべきである。この合意は,被告矢野による本件手帳等の利用を制限することを中核とするものであり,被告矢野に返還することは予定されておらず,寄託契約ではない。
(被告矢野の反論)
上記の念書は,本件手帳等を奪い取られるにしても,せめてその後の管理について一定の願いだけは聞き入れてほしいという趣旨で被告矢野が作成し,原告らにおいて,これを聞き入れていやるという趣旨で署名したものである。所持者が畏怖して物を交付し,あるいは奪取行為があった場合においても,念書など自由意思があったかの文書が交付される例はままあることであり,上記のような念書が作成されたことによって,本件手帳等が強奪されたとの事実が変わるものではない。
(8)第3事件の損害額
(被告矢野の主張)
被告矢野は,原告らによる本件手帳等の強奪及び被告矢野の意思に反した家探しにより,多大な精神的苦痛を被った。これに対する慰謝料の額は,原告らについて,それぞれ1000万円を下らない。
(原告らの主張)
被告矢野の主張は争う。
第3 争点に対する判断
1 第1記事による名誉毀損について
第1記事は,原告らが,被告矢野の自宅に居座って,被告矢野に対し,「出すまで帰れない」「それが貴方の身のためだ」などと強要し,被告矢野の手帳を段ボール箱に詰めて持ち去った,原告らは,本棚,押し入れから妻の部屋に至るまで家探ししていった,との事実を摘示したものであり,このような内容の第1記事は,原告らの社会的評価を低下させるものと認められる。
2 第2記事による名誉毀損について
第2記事は,原告らが,4回にわたって被告矢野宅を訪問し,その都度,被告矢野に,執拗な,強い要求をし,被告矢野が「プライバシーの侵害になる」という強い抗議をしたにもかかわらず,被告矢野の手帳などを無理矢理持ち去り,これを強奪し,また,被告矢野が強い抗議をしたにもかかわらず,被告矢野宅の家探しを2回にわたり強行したと,一般人に認識させるものであり,原告らの社会的評価を低下させるものと認められる。
3 第1記事についての被告矢野の責任について
原告らは,第1記事は,被告矢野が情報を提供したものであったと主張する。
そして,原告らは_第1記事中の「朱野氏と同世代の元公明党幹部X氏」は被告矢野にほかならないとし,被告矢野と同世代の公明党幹部経験者42名(原告ら及び被告矢野を含む)のうちの36名は,自ら又は親族において,第1記事についての情報提供を否定する内容の陳述書を提出している(甲32,甲33の1ないし36)。
また,第1記事には,「黒革の手帖」あるいは「衆議院手帖」「大きな事件が起きたときや,政局が動いた年は何冊も使っていたので,合計100冊以上にのぼる」と記載されているところ(前提事実),原告らは,これらは被告矢野以外には知りようのない事実であると主張する。
さらに,被告講談社及び被告出樋は,第1記事について相当性の主張をしておらず,同記事の情報提供者が誰であったかも主張していないことは当裁判所に顕著である。
しかしながら,被告矢野は,本人尋問において,学会や公明党の者に,手帳を持って行ったということを話したことがある旨供述しており,第1記事の対象となった事実を知っていた者は被告矢野以外にいなかったとは認められない。また,問題の手帳が黒革の手帳あるいは衆議院手帳であったこと,合計100冊以上にのぼるといった第1記事に記載されている具体的事実が必ずしも被告矢野以外には知り得ない事実であったと認めるに足りる証拠もない。
そうすると,第1記事の情報提供者が被告矢野以外の者であった可能性を否定できないところであり,本件各記事の内容,上記認定事実その他本件全証拠を併せても,被告矢野が第1記事の情報提供者であったと認定することはできない。
4 第2記事についての被告矢野の責任について
前提となる事実及び証拠(被告矢野)によれば,被告矢野は,本件週刊誌の記者に対し,第1記事の対象とした事柄についてコメントを述べたことが認められるところ,被告矢野としては,自身の手帳が持ち去られたとする第1記事を掲載した本件週刊誌が発売されていた状況において,本件週刊誌の記者から取材を受けた以上,自らのコメントがそのまま本件週刊誌に掲載されるであろうことは十分に予見していたと認められ,被告矢野には,第2記事による原告らに対する名誉毀損についての責任がある。
5真実性の抗弁について
(1)公共の利害に関わる事実該当性及び公益を図る目的について
既に認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,本件各記事によって摘示された事実は,もと国会議員であった原告らが,被告矢野の自宅から,被告矢野が使い続けてきた手帳等を持ち去ったというものであり,この事実は,公共の利害に関わる事実であると認められ,また,被告講談社及び被告出樋は,専ら公益を図る目的で本件各記事を本件週刊誌に掲載したものと認められる。また,弁論の全趣旨によれば,被告矢野においても,公益を図る目的で,第2記事の取材に応じたものと認められる。
(2)摘示事実の真実性について
ア 被告らの主張に沿う証拠
被告講談社及び被告出樋は,本件各記事につき,原告らが被告矢野の意思に反して本件手帳を持ち出したことは真実であると主張し,被告矢野も,第2記事につき,原告らが被告矢野から本件手帳を強奪したことは真実であると主張する。そして,被告らの主張に沿う次の証拠がある。
(ア)被告矢野の供述
被告矢野は,本人尋問において,次のように供述しており,その陳述書(乙ハ4)にも同趣旨を記載している(以下,これらを併せて「被告矢野の供述」という。)。
a原告らは,平成17年5月15日,被告矢野宅を訪れ,被告矢野に,いきなり「公明党OB議員が怒っている。文藝春秋に,矢野さんは『手元にぼう大な資料がある』と書いている。その手帳と資料のすべてを預かりたい。それをOB議員に見せて説得すれば,皆も『もう書かないのだな』と納得するから,是非おびただしい手帳と資料を預けてもらいたい」と述べ,手帳を渡すよう要求した。
被告矢野は,原告らに対し,「それは無茶な話だ,俺のプライバシーが書いてある手帳を預けろという意味が分かっての話か,それは人権問題になる,断る」「我が家のすべてが書いてある,それを渡せというのは個人情報の侵害,人権侵害,フ。ライバシーの侵害だ,分かっているのか」などと述べて拒絶したが,原告らは,「それを渡さないと,皆怒り狂って何が起こるかわからない」と言い,被告矢野を脅迫し,手帳を渡すよう頑強に求め,「渡さないなら覚悟はできていますね」「渡さなければ党内を押さえられない。渡さないと重大なことになる」などと繰り返した。被告矢野は,前日の創価学会青年部の言動に加えて,このような原告らの発言や態度から,身の危険を感じ,手帳を渡す旨を述べた。
b 原告らは,いったん引き上げた後,1時間ほどして再度来訪し,「『子供の使いじゃあるまいし』と怒られた」「『今あるだけでもよいから持って来い』と言われて来た」「3年分ぐらいは手元にあるだろう。それをよこせ」と被告矢野を恫喝し,「どうしても駄目か」などと巨体を乗り出して迫ってきたので,被告矢野は,身の危険を感じ,書斎に戻り,手元にあった衆議院手帳3冊を茶封筒に入れ,密封して原告らに渡した。
c 原告らは,同月17日,被告矢野宅を訪れ,被告矢野が準備していた手帳を点検し,「まだ全部じゃない。あとはいつ渡してくれるか」「もしこれ以外に残っていたら重大なことになる」「矢野さんの身に危険が迫る」などと執拗に追及し,「家探しをさせてほしい」と求め,被告矢野は,「llO番するぞ」と言い,再三断ったが,「さあ案内してくれ」と被告矢野の腕をつかんだ。被告矢野はこれを振り払ったが,身の危険を感じ,原告らの要求に応じることとした。原告らは,被告矢野宅の中を1階から3階まですべて見て回り,棚や引き出しまで綿密に調べた。
d 原告らは,同月30日,被告矢野宅を訪れ,被告矢野は,残っていたすべての手帳を渡したが,原告らは,「これで全部か」「もし紙切れ一枚でも残っていたら,我々は許さない」と強い口調で言い始め,「家探し,家の徹底調査をする」と言った。被告矢野は,「手帳や資料を強引に持っていくこと自体犯罪だ」「不法侵入,脅迫ですぐに訴える」と言い,110番をするつもりで電話機を手に取ったが,原告黒柳は,被告矢野につかみ掛かって止め,右手を取って立ち上がらせ,案内を強要した。被告矢野は「帰ってくれ。脅迫,家宅侵入,もう我慢ができない」などと大声で言ったが,原告らは,被告矢野を先頭に立たせて,2回の書斎では,棚を詳細に調べ,引き出しも全部見たほか,3階の被告矢野の部屋は,引き出しのすべてを開け,クローゼットまで開け,中の箱まで調べ,被告矢野宅のすべての部分を見て回った。
被告矢野は,原告らに促されるまま,3階の妻の部屋のドアを開けたところ,原告らは,中をのぞき込んだ。そのとき,着替えをしていた妻は「きゃあ,きゃあ」と大声を出した。
(イ)矢野満子の供述
被告矢野の妻矢野満子(以下「満子」という。)は,次のように証言し,陳述書(乙ハ5)にも同趣旨を記載している(以下,これらを併せて「満子の供述」という。)。
a 原告らが平成17年5月15日に来訪した際,応接間で,被告矢野と大声でもめているのをキッチンで聞いた。原告黒柳が,「渡すのが矢野さんの身のためだ」と迫る声が聞こえ,被告矢野が「無茶を言うな。それはできない」と大声で反論していた。原告大川が,脅すように,「渡したほうがあんたのためだ」と言い,被告矢野は,「プライバシーの侵害だ」と興奮した声で言っていた。
b 原告大川は,同日,2回目に来訪した際,被告矢野に,「『子供の使いじゃあるまいし,手ぶらで帰るとは何事だ』と怒られた」,「『今,手元にあるだけでももらって来い』と言われた」と言っている声が聞こえ,怖くて心が凍りついた。
c 原告らは,同月17日,封をした段ボール箱を外に運び出し,その後,被告矢野に案内させて家の中を家探しした。被告矢野は不機嫌な顔で案内していた。
原告らは,書斎の扉を開いたり,ファイルを出すなどして調べていた。被告矢野は,「お前ら自分のやっていることが分かっているのか」と言っていた。
d 同月30日,帰宅すると,原告らが来ていた。そのまま3階の私室に行き,クローゼットのそばに立って着替えを始めたが,突然引き戸が開いたので,びっくりし,「きゃ一」と声を出した。引き戸の方を見ると,原告らが被告矢野の後ろに立ってこちらを覗いていた。視線が合ったので,「きゃ一」とまた大声を上げた。
(ウ)生沼千晶の供述
被告矢野の事務所に秘書として勤務していた生沼千晶(以下「生沼」という。)は,平成17年5月17日,原告黒柳ほか2名が被告矢野の自宅事務所に訪問し,応接間で,被告矢野ほかの大きな声が二,三回聞こえた,また,同月30日にも同じ3名が訪問したが,被告矢野ほかの大声のやり取りが二,三回ないし数回聞こえた旨証言しており,陳述書(乙ハ6)にも同趣旨を記載している(以下,これらを「生沼の供述」という。)。
イ 反対の証拠
これに対し,上記の証拠に反対の証拠として次のものがある。
(ア)原告黒柳の供述
原告黒柳は,本人尋問において,次のように供述しており,その陳述書(甲18)にも同趣旨を記載している(以下,これらを併せて「原告黒柳の供述」という。)。
a 原告らが,平成17年5月15日に1回目の訪問をした際,被告矢野に対し,手帳を原告らが預かるのが一番よいと述べ,被告矢野は,原告らに対し,手帳を処分してもよい,原告らに手帳を預けると述べた。
b 原告らは,同日,2回目の訪問の際,被告矢野に,手元にある手帳だけでも預かれないかと申し向けたところ,被告矢野は,快くこれに応じた。その後,原告らは,被告矢野に自宅内を案内してもらった。
c 被告矢野は,原告らが同月17日に訪問した際,原告らに対し,予め準備していた念書について説明をし,満子とともに,この念書に署名し,原告らは,被告矢野から本件手帳等の一部の交付を受けた。
d 原告らは,同月30日に訪問した際,本件手帳等の残りの交付を受けた上,被告矢野の案内のもとに,同人宅内を見て回ったが,被告矢野の承諾を得ないで引き出しやクローゼットを開けたことはない。
(イ)音声データ
被告らは,甲25号証ないし甲28号証の各1ないし4の提出につき,時機に後れた攻撃防御方法であるとして,却下を申し立てているが,これにより著しく訴訟手続を遅滞させることになるとは認められないから,この申立ては採用することができない。
証拠(甲25ないし甲28の各1,2)によれば,原告らが,4回にわたり被告矢野宅を訪問した際に,原告伏木がICレコーダ(IC RECORDER ICD−MS515)で録音した音声デー.タ(以下「本件音声データ」という。)には,被告矢野が供述するような強制あるいは脅迫にわたる原告らの発言は録音されておらず,むしろ,次のような供述が録音されていることが認められる(以下,本件音声データに録音された原告ら及び被告矢野の供述を「本件録音供述」という。)。
a 平成17年5月15日の1回目の訪問時
被告矢野「あなたたちが立ち会ってね,燃やせばいいんです」「大川さんの言うように預けるというのも一つの方法だから」「預けますよ。ね。僕の手元に残さんように」
b 同日の2回目の訪問時
被告矢野「手元にある資料というのは,若干の資料ですけど,お持ちになりますか。いいですよ私は」「電話でおっしゃっていただいたら,すぐそうしましたのに」
原告黒柳「3階にも事務所があるから,見て来い,見て来い,見て来い,って言われてね」
被告矢野「どうぞ,ごらん頂いて結構ですよ」,「どうぞ見て下さい。3階からら2階から」
c 同月17目の訪問時
被告矢野「冒頭にですね,私矢野は,あんた方が承諾する案件以外に,今後この資料は利用しない。このことを責任を持って,約束する。いいですね」「僕はこの文章の冒頭にね,単なる預かり書じゃなくって,私はこういう資料を使って,書くことはしませんと。…コピーなんかとってませんよ,私は。もし取っとったとしても,私は書きませんって,言ってるんですから」「これが必要なときも。…僕はメモして帰ればいいわけですから。もって帰るとは言いませんから」
d 同月30目の訪問時
被告矢野「納戸でも何でもどうぞ」
原告黒柳「やっぱり,その,矢野さんがご案内頂き,奥さんの了解を頂かなきゃね。そんなもの,私は社会人だし,少なくともあの,立法府に長年いた者ですから,そんなもの,ズカズカズカズカね,行くわけにはいきませんよ,それは。それはいけませんよ,そんな失礼なことは出来ません」
被告矢野「いやいや,どうぞ,もう。ご案内してもいいですよ」
ウ 本件音声データの信用性
(ア)そこで,これらの証拠の信用性を検討するに,鈴木隆雄は,平成19年2月26日付け鑑定書(甲34の1ないし4)において,本件音声データのすべてについて,周波数分析を行い,音や信号の周波数成分の状態をスペクトログラムに表示し,録音内容の聴取検査をも併用し,本件音声データを検査した結果,本件音声データには,合成,修正及び加工された箇所は見当たらず,編集改ざんが行われた録音ではないと考えられると鑑定しており,これによれば,本件音声データには編集改ざんがあるとは認められない。
(イ)これに対し,鈴木創及び鈴木松美作成の平成19年4月9日付け鑑定書(以下「日本音響研究所鑑定書1」という。乙ハ7)には,本件音声データの形式であるmsv形式のファイルに編集した形跡が認められないとしても, 削除及び結合の手段による編集がされていないということはできない旨記載されている。
また,上記両名及び吉田靖の作成に係る同年5月31日付け鑑定書(以下「日本音響研究所鑑定書2」という。乙ハ9)には,次の記載がある。
a 平成17年5月30日の音声データ(甲28の1)の約58分29秒付近に録音されている「ドンドン」という音響信号(原告らと被告矢野が,被告矢野宅の3階に行った際のもの)は,被告矢野宅3階の居間・寝室(満子の部屋)のドアを部屋の内側からノックした際に発生した音響信号ではないものと推定できる。
b 同音声データの約58分31秒付近に録音された「着替えておりますから」との被告矢野の発言は,上記ドアの部屋の外側直近で発生したものである可能性は低いと考えられる。
(ウ)そこで,これらの鑑定について検討するに,まず,日本音響研究所鑑定書1は,上記のような結論を出した根拠として,実験結果に基づいて,音声データに分割・結合という編集をしたとしても,波形,周波数分析図面上に特異点は見られなかったことを挙げている。
しかしながら,上記鑑定書は,竹取物語の冒頭部分を読み上げた録音データについて検討を行ったものであるところ,このデータは,本件音声データと比較して,背景雑音が少なく一定していて,歩行中の歩行音,マイクロホンと着衣との接触音等の背景雑音の変化が想定される本件音声データとは異なると認められる上(甲36),鈴木隆雄の作成に係る平成19年6月19日付け鑑定書(甲36)には,日本音響研究所鑑定書1の鑑定資料となった分割・結合後の音声データにつき,雑音の立ち上がりが不自然である,あるいは,背景雑音が前後の状況と異なるなどの不自然な箇所が認められると記載されているところ,これは,上記音声データをスペクトログラムによる周波数分析に基づいたものであり,合理的なものであると認められる。
また,日本音響研究所鑑定書2についても,鈴木隆雄作成に係る平成19年8月6日付け鑑定書(甲38)は,日本音響研究所鑑定書2の内容につき,平成17年5月30日の音声データには,合成,修正,加工された箇所が認められず,同音声データは編集改ざんが行われた録音ではないと考えられるとしている上,鈴木隆雄作成の2007年5月31日付け「鑑定書」についての検討書(甲39)には,日本音響研究所鑑定書2は,@上記(イ)aにつき,周波数成分の時間スケールの違いを無視し,鑑定資料等のスペクトログラムの明確な相違点を看過して共通点のみを挙げ,ノックする位置や強さよって衝撃音の周波数成分が変化する可能性を考慮に入れることもせず,さらに,音声によって強められた音の強さを「ドンドン」という衝撃音として取り扱っているなど,不適切な点が多い,A上記(イ)bにつき,背景音等の録音条件を無視し,相対的な音圧レベルであるとしても比較の基準とする音の指定を示さないまま比較を行うなど,不適切な点が多いと指摘しているところ,これらの指摘はスペクトログラムによる周波数分析に基づいたものであり,合理的なものであると認められる。
(エ)以上検討したところによれば,日本音響研究所鑑定書1及び2は,いずれも採用することができない。
エ 認定事実
以上のとおり本件音声データが編集改ざんしたものではないと認められることにかんがみると,原告黒柳の供述は本件録音供述に沿う限度において信用性があるものと認められる。
以上の検討を踏まえ,証拠(甲6,甲7,本件録音供述,原告黒柳)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,被告矢野,満子及び生沼の供述中この認定に反する部分はいずれも採用することができない。
(ア)平成17年5月15日の1回目の訪問時
a 原告らは,同日,被告矢野の自宅を訪問し,被告矢野に,手帳について尋ねたところ,被告矢野は,原告らに,「あんなものはだから嘘も隠しもしませんよ」,「資料の件に関してもね,…燃やしたとか燃やさんとかってなことはね,言えば済む話です。それがあるとこうやって申し上げた。あなた方が立ち会ってね,処分するならしていいよということで僕は言ってるんです」,「あなたたちが立ち会ってね,燃やせばいいんです」と述べた。
b 原告大川は,被告矢野に,「だから,もしあれだったら,封印して,僕らが矢野さんから預かっててもいいよ。開けてみる必要ないんだから」,「だからね,お預かりするんなら矢野さんのこの前で,封印して,見なくてもいいんで,封印して,お預かりしていくだけの話になっていく。開ければ人権問題だから」と述べた。
c 原告大川は,被告矢野に,「僕らの気持ちはね,残しておいて,そのことで悪用するんじゃないかっていう,僕ら,そういう邪推じゃなくて,もし,すっきりね,ここでちゃんとお辞めになるというなら,周囲をね,周囲を説得するのに,量はどのくらいか分かりませんよ,あるいは一部,都合でいいかもしれんけど,焼くって言ったんだから,封印して全部ね,これだけ,ちゃんとしっかりして,もうこんな論議やめてくれっていうには,預かってるのが一番いいなというのがね」と述べ,被告矢野は,原告大川の上記発言に対し,「なるほど,なるほど」と応じた。
d 被告矢野は,原告らに,「だから,処分しますし,大川さんの言うように,預けるというのも一つの方法だから」と述べた。
e 原告大川は,被告矢野に,「伏木さんが,矢野さん何というかわかんないけども,封印してお預かりするってことはどうだって僕は言ったんですよ」と述べ,被告矢野は,原告伏木に,「じゃあ,あんたに預ける」と応じた。
(イ)同日の2回目の訪問時
a 原告黒柳は,被告矢野に,「おしかりを受けて,またこうやって来たわけですよ。申し訳ないです,すみません」と切り出したところ,被告矢野は,原告らに,「ある弁護士に預けてあるんですよ」と述べた。
b 原告大川が,被告矢野に,被告矢野の上記発言などを受けて,「弁護士さんとこ疑うわけじゃないけど,預かって,うちの党本部で僕らが預からせてもらえば一番安全だけどな」と述べた。
被告矢野は,原告大川の上記発言を受けて,原告らに,「もうすぐに引き上げてきまずから。あのう,お渡しするということですから」と述べた。
c 原告大川が,被告矢野に,「一回仕事場見せてもらったらどうだろうか」と述べ,被告矢野は,「いつでもご覧にいれますけどね」と応じた。
d 原告黒柳は,被告矢野に,「要するに,今あるものを,失礼だけど,全部いただいて,封してもらって,いただいていくと」と述べ,被告矢野は,「今手元にどんなんあるか,見てみますのでね」,「ごく最近のものしかないんですよ」と述べた。その後,被告矢野は,自分の手元にあった本件手帳等の一部を封筒に入れ,密封した上,これを原告らに手渡した。
e 原告大川は,被告矢野に,「こんな遅く夜悪いけどさ,せっかく来たんだから,矢野さんの作業所,見学させて」と申し入れたところ,被告矢野は,「どうぞご覧頂いて結構ですよ」,「どうぞ見て下さい。3階から2階から」と述べ,原告らに自宅内を案内した。
f 原告らは,上記本件手帳等の一部持ち帰った。
(ウ)平成17年5月17日の訪問時
a 被告矢野は,原告らが同日被告矢野宅を訪問した際,既に本件手帳等の一部を段ボール箱に入れて準備しており,原告らとともに,手帳の年度等を確認した。
b 原告黒柳は,上記段ボール箱を密封する際,被告矢野に,満子が立ち会うことを提案した。被告矢野は,当初,「女房にはこんなこと知らせない方がいいって」と述べていたが,その後,原告らに,「黒ちゃん,親切であんた言ってくれてるんでしょ」と述べ,満子を呼んできた。
c 被告矢野は,「お三方に預けときゃ,すっきりします」と述べるとともに,原告ら及び満子立会いのもと,本件手帳等の一部を梱包した段ボール箱をガムテープで封印した。
d 被告矢野は,次の内容を記載した念書を準備しており,原告らにその内容を読み聞かせた上,原告ら及び満子とともに,この念書に署名した。
「矢野絢也は,矢野の日記および関係書類(梱包2箱)を公明党元議員の大川清幸氏,伏木和雄氏,黒柳明氏に預ける。
双方は次の条件を遵守する。
@ 矢野は,三氏らが承諾する案件以外に今後この資料は利用しない,ことを責任を持って約束する。
A 三氏は,これら資料が矢野のプライバシーに関する資料であること,他の人物,団体に迷惑が掛かることに鑑み,責任を持って,紛失,流出することのないよう厳重に保管し,矢野の了解なしに開封しないことを責任を持って約束する。また,矢野が個人的な情報が必要な場合は三氏の了解,立ち会いの元で資料を閲覧することもある。
B 将来,関係者が死亡したときは,資料の流出を避けるため,上記@,Aの条件に基づき,矢野は子息矢野清城,三氏は指定する公明党関係者の立ち会いの元で協議し,これら資料の保管の継続などの処理を決める。
C 5月15日に三氏に別途に預けた手帳および書類も上記@,A,Bと同様の扱いとする。
以上,双方,信義誠実を重んじ確約する。」
e 原告らは,前記段ボール箱を持ち帰った。
(エ)平成17年5月30日の訪問時
a 被告矢野は,原告らが同日被告矢野宅を訪問したとき,本件手帳等の残部を準備していた。原告大川は,被告矢野に,「文春のはじめの方を見ると,ね,資料とメモ,膨大で我ながら驚いたって,驚きになっているから,矢野さん自身が驚きになるなら,こないだのとこれで,ほんまに膨大資料,全部なんかねと思うんですけど」と述べたところ,被告矢野は,「それを疑われるんなら,家探ししますわ」と応じた。
b 被告矢野は,原告らに,「これをお預けすること自体ものすごい抵抗感じてるんですよ。正直言うて,人権蹂躙ですよ。私のプライバシーまで持っていくんですから。私の子供の問題,私の家族の問題,私の父親の問題,全部入っているんですよ。これあなた方持っていったことが世間にばれたら大変なことですよ」と述べたが,その後,「わかった,わかった。」とも述べた。
c その後,原告らが,被告矢野に,被告矢野宅の案内を求めたところ,被告矢野は,「ご案内してもいいですよ」と述べ,原告らに被告矢野宅内を案内した(その際,原告らが,着替えをしていた満子の部屋の中をのぞき込み,満子がと大声を出した事実は認められな
い。)。
d 被告矢野及び原告大川は,その後,次の内容を記載した念書に署名した。
「被告絢也は,5月15日,5月17目,5月30日の3回で1967年から2001年まで通年の矢野の日記および関係書類を公明党元議員の大川清幸氏,伏木和雄氏,黒柳明氏に預けた。
双方は,5月17日に確認した条件を信義誠実を重んじ遵守する。以上,双方,確約する。」
e 原告らは,上記本件手帳等を持ち帰った。
オ 本件各記事の真実性についての結論
以上の認定事実によれば,被告矢野は,原告らの求めに応じ,自らの意思に基づき,本件手帳等を交付し,被告矢野宅内を案内したことが認められ,第1記事に記載されているように,原告らが,被告矢野の自宅に居座って「出すまで帰れない」,「それが貴方の身のためだ」などと強要し,原告らが本件手帳等を持ち去ったとの事実,原告らが,家探しをしていったとの事実,第2記事に記載されているように,原告らが,被告矢野に,執拗な強い要求をし,被告矢野が「プライバシーの侵害になる」という強い抗議をしたにもかかわらず,本件手帳等を無理矢理持ち去り,強奪したという事実,被告矢野の強い抗議にもかかわらず家探しを2回にわたって強行したとの事実は認められない。
したがって,被告らの真実性の抗弁は採用することができない。
6 第1事件及び第2事件の損害額について
(1)既に認定した事実と証拠(甲18,原告黒柳)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,第1記事及び第2記事が掲載された本件週刊誌が発売されたことにより,それぞれ社会的評価が低下し,精神的苦痛を被ったことが認められる。そして,既に認定した事実と証拠(甲40,甲41のL甲42の1ないし3)及び弁論の全趣旨によれば,本件各記事は,いずれも原告らが犯罪行為若しくはこれに類する行為を行ったという印象を与えるものである上,これらの記事が掲載された本件週刊誌は全国的に販売され,本件各記事は,多数の読者が読んだものと認められ,その他本件に現れた諸事情にかんがみると,第1記事により原告らが被った損害は原告ら各自につき100万円,第2記事により原告らが被った損害は原告ら各自につき100万円がそれぞれ相当というべきである。
(2)原告らが第1事件及び第2事件の訴えの提起及び遂行を原告ら訴訟代理人に委任したことは当裁判所に顕著であり,両事件の内容,審理の経過,上記認容額等に照らすと,被告講談社及び被告出樋の第1事件の不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用分の損害は,原告ら各自につき10万円が相当であり,被告らの第2事件の不法行為と相当因果関係を有する弁護士費用分の損害は,原告ら各自につき10万円が相当と認める。
7 謝罪広告について
上記認定のとおり,本件各記事は,原告らが,被告矢野宅から,被告矢野の意思に反して,本件手帳等を持ち去り,家探しをしたという内容であり,いずれも原告らが犯罪行為若しくはこれに類する行為を行ったという印象を与えるものである上,第1記事及び第2記事が掲載された本件週刊誌は全国的に販売されたことにかんがみると,原告らの名誉を回復するためには,金銭による賠償では足りず,被告講談社及び被告出樋には第1記事につき別紙謝罪広告1の内容の謝罪広告,第2記事につき別紙謝罪広告2の内容の謝罪広告を別紙掲載要領記載の要領で掲載することを命じるのが相当である。
また,被告矢野についても,第2記事が被告矢野の発言に基づく記事であることかんがみると,同記事につき別紙謝罪広告3の内容の謝罪広告を別紙掲載要領記載の要領で掲載することを命じるのが相当である。
8 原告らの不法行為及び本件手帳等の返還請求について
(1)不法行為について
既に認定説示したところによれば,原告らは,被告矢野に本件手帳等の交付を求め,被告矢野は,原告らにこれを渡したものであるが,その過程において,原告らに,被告矢野が供述する内容の強要や脅迫があったとは認められない。また,録音供述の内容をみても,原告らが被告矢野の家族に言及している部分もあるものの,これも,会話の推移の中でみると,強要あるいは脅迫にわたるものであったと認めることはできず,その他にも,原告らにおいて,被告矢野に対し,強要あるいは脅迫にわたる行為があったとは認められない。これまでに認定した事実によれば,被告矢野は,原告らと話をする過程において,自らの判断により本件手帳等を原告らに預けること決断したものと認められ,原告らが,被告矢野から本件手帳等を奪い,持ち去り,強奪したものとは認められない。
また,既に認定したとおり,被告矢野は,原告らが自宅内を見ることを了解し,自ら案内したものであり,原告らが,被告矢野の意思に反して被告矢野の自宅内を家探ししたものとも認められない。
以上のとおり,被告矢野の主張する原告らの不法行為はいずれも認められない。
(2)本件手帳等の返還請求について
既に認定した事実によれば,被告矢野は,原告らに対し,2通の念書を作成し,本件手帳等を交付したものであり,両者の間には,その内容に沿った合意が成立したものと認められるところ,これらの念書は,被告矢野が原告らに対し本件手帳等を預けることを内容とするものであり,原告らは,これにより,本件手帳等について占有権原を取得したものと認められる。
そして,本件念書には,「矢野は,三氏らが承諾する案件以外に今後この資料は利用しないことを責任を持って約束する」,「矢野が個人的な情報が必要な場合は三氏の了解,立ち会いの元で資料を閲覧することもある」,「将来,関係者が死亡したときは,資料の流出を避けるため,(中略),矢野は子息矢野清城,三氏は指定する公明党関係者の立ち会いの元で協議し,これら資料の保管の継続などの処理を決める」と記載されていることにかんがみると,本件念書による合意は,少なくとも関係者が死亡するまでは本件手帳等を被告矢野に返還しない合意を含むものと解される。
(3)以上のとおりであるから,被告矢野の原告らに対する第3事件の請求は,その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がない。
第4 結語
以上によれば,原告らの請求は,主文第1項ないし第4項の限度で理由があるからこれを認容し,原告らの被告らに対するその余の請求及び被告矢野の原告らに対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第4部
裁判長裁判官 端 二三彦
裁判官 大島 淳司
裁判官 小嶋 順平
(別紙)
当事者目録
東京都墨田区東向島
第1事件原告・第2事件原告・第3事件被告
大川清幸
(以下「原告大川」という。)
横浜市鶴見区
第1事件原告・第2事件原告・第3事件被告
伏木和雄
(以下「原告伏木」という。)
東京都新宿区
第1事件原告・第2事件原告・第3事件被告
黒柳明
(以下「原告黒柳」という。)
上記3名訴訟代理人弁護士 佐藤 博史
同 新堀富士夫
同 海野 秀樹
同 小川 治彦
同 小林 正憲
東京都文京区
第1事件被告・第2事件被告 株式会社講談社
(以下「被告講談社」という。)
同代表者代表取締役 野間佐和子
同所株式会社講談社内
第1事件被告・第2事件被告 出樋 一親
(以下「被告出樋」という。)
上記両名訴訟代理人弁護士 的場 徹
同 山田 庸一
同 服部 真尚
同 宮川 舞
同 大塚 裕介
東京都新宿区
第1事件被告・第2事件被告・第3事件原告
矢野絢也
(以下「被告矢野」という。)
同訴訟代理人弁護士 弘中惇一郎
同 久保田康史
同 川端 和治
同 河津 博史
同 弘中 絵里
(以上)
(別紙)
謝罪広告1
謝罪広告
私どもは,株式会社講談社発行の「週刊現代」平成17年8月6目号(同年7月25日発売)誌上において,「『矢野絢也元公明党委員長極秘メモ』100冊が持ち去られた!」との見出しのもと,貴殿らが平成17年5月下旬,公明党の元委員長であった矢野絢也氏の自宅において,同氏が極秘メモを記録していた衆議院手帖などを出すように強要し,同氏宅の本棚,押し入れ,妻の部屋に至るまで家探しし,同氏の衆議院手帖100冊を10箱近い段ボール箱に詰めて同氏より奪い,これを持ち去ったとの記事を掲載しました。
しかしながら,これらの記載は真実ではなく,貴殿らの名誉を著しく毀損するものであります。
よって,私どもは,貴殿らの名誉を著しく毀損したことに対し,謹んで陳謝の意を表します。
平成年月日
株式会社講談社
代表取締役 野間佐和子
「週刊現代」編集長
出樋 一親
大川清幸殿
伏木和雄殿
黒柳明殿
(別紙)
掲載要領
1掲載面白黒面
2広告全体の大きさ記事中5分の2頁
3活字の大きさ
(1)表題「謝罪広告」62級明朝体活字
(2)本文20級明朝体活字
(3)氏名・宛名24級明朝体活字
4年月日欄は,掲載の日付を記載すること。
(別紙)
謝罪広告2
謝罪広告
私どもは,株式会社講談社発行の「週刊現代」平成17年8月13日号(同年8月1日発売)誌上において,「公明党OB議員からの提訴は笑止矢野絢也氏が『手帖強奪』の真相激白」との見出しのもと,貴殿らが「週刊現代」平成17年8月6日号の記事に関して私どもに名誉毀損による訴訟を提起してきたことに対し,笑止で不可解な提訴であり,貴殿らは4回にわたって矢野絢也氏宅に来訪し,その都度,執拗な,強い要求を行い,同氏が「プライバシーの侵害になる」と強い抗議をしたにもかかわらず,手帖などを無理矢理に持ち去り,また,同氏の強い抗議にもかかわらず,手帖などを探すために家探しを2回にわたって強行するなどして,同氏の手帖を強奪したとの記事を掲載しました。
しかしながら,これらの記載は真実ではなく,貴殿らの名誉を著しく毀損するものであります。
よって,私どもは,貴殿らの名誉を著しく毀損したことに対し,謹んで陳謝の意を表します。
平成年月日
株式会社講談社
代表取締役 野間佐和子
「週刊現代」編集長
出樋一親
大川清幸殿
伏木和雄殿
黒柳明殿
(別紙)
謝罪広告3
謝罪広告
私は,「週刊現代」平成17年8月13日号(同年8月1日発売)に「公明党OB議員からの提訴は笑止矢野絢也氏が『手帖強奪』の真相激白」との見出しのもとに掲載された記事に関する「週刊現代」からの取材に対し,貴殿らが,4回にわたって私宅に来訪し,その都度,執拗な,強い要求を行い,私が「プライバシーの侵害になる」と強い抗議をしたにもかかわらず,手帖などを無理矢理に持ち去り,また,私の強い抗議にもかかわらず,手帖などを探すために家探しを2回にわたっ
て強行したことも事実であるとのコメントをし,これが上記「週刊現代」に掲載されました。
しかしながら,このコメントは真実ではなく,貴殿らの名誉を著しく毀損するものであります。
私は,貴殿らの名誉を著しく毀損したことに対し,謹んで陳謝の意を表します。
平成年月日
矢野絢也
大川清幸殿
伏木和雄殿
黒柳明殿
(別紙)
謝罪広告4
謝罪広告
私どもは,株式会社講談社発行の「週刊現代」平成17年8月6日号(同年7月25日発売)誌上において,「『矢野絢也元公明党委員長極秘メモ』100冊が持ち去られた!」との見出しが付された記事において,貴殿らが平成17年5月下旬,公明党の元委員長であった矢野絢也氏の自宅において,同氏が極秘メモを記録していた衆議院手帖などを出すように強要し,同氏宅の本棚,押し入れ,妻の部屋に至るまで家探しし,同氏の衆議院手帖100冊を10箱近い段ボール箱に詰めて同氏より奪い,これを持ち去ったとの事実を摘示したことにより,あたかも貴殿らが犯罪行為もしくはこれに準ずる行為を行ったかのような印象を与える記事を掲載しました。
しかしながら,これらの記載は全くの虚偽であり,貴殿らの名誉を著しく毀損するものであります。
よって,私どもは,貴殿らの名誉を著しく毀損したことに対し,謹んで陳謝の意を表しますとともに,今後二度とこのような誤りを犯さないことを誓約します。
平成年月日
株式会社講談社
代表取締役 野間佐和子
「週刊現代」編集長
出樋一親
大川清幸殿
伏木和雄殿
黒柳明殿
(別紙)
謝罪広告5
謝罪広告
私矢野絢也は,株式会社講談社発行の「週刊現代」平成17年8月6日号(同年7月25日発売)に掲載された「『矢野絢也元公明党委員長極秘メモ』100冊が持ち去られた1」との見出しが付された記事について,同誌記者に虚偽の情報を提供し,同誌上に「公明党OB議員」「元公明党幹部X氏」「古参の創価学会副会長」なる者として登場し,貴殿らが平成17年5月下旬,私の自宅において,私が極秘メモを記録していた衆議院手帖などを出すように強要し,私宅の本棚,押し入れ,妻の部屋に至るまで家探しし,私の衆議院手帖100冊を10箱近いダンボール箱に詰めて私から奪い,これを持ち去6たとの事実を摘示し,あたかも貴殿らが犯罪行為もしくはこれに準ずる行為を行ったかのような印象を与える記事の掲載に深く関与いたしました。
しかしながら,これらの記載は全くの虚偽であり,貴殿らの名誉を著しく毀損するものであります。
私は,貴殿らの名誉を著しく毀損したことに対し1謹んで陳謝の意を表しますとともに,今後二度とこのような誤りを犯さないことを誓約します。
平成年月日
矢野絢也
大川清幸殿
伏木和雄殿
黒柳明殿
(別紙)
謝罪広告6
謝罪広告
私どもは,株式会社講談社発行の「週刊現代」平成17年8月13日号(同年8月1日発売)誌上において,「公明党OB議員からの提訴は笑止矢野絢也氏が『手帖強奪』の真相激白」との見出しのもと,貴殿らが「週刊現代」平成17年8月6日号の記事に関して私どもに名誉毀損による訴訟を提起してきたことに対し,笑止で不可解な提訴であり,貴殿らは4回にわたって被告矢野宅を来訪し,その都度,執拗な,強い要求を行い,同人が「プライバシーの侵害になる」と強く抹議したにもかかわらず,手帖などを無理矢理に持ち去り,同人の強い抗議にもかかわらず,手帖などを探すために家探しを2回にわたって強行するなどして,同人の手帖を強奪するという,強要,恐喝もしくは強盗の犯罪行為を行ったことは間違いない,との印象を与える記事を掲載しました。
しかしながら,これらの記載は全くの虚偽であり,貴殿らの名誉を著しく毀損するものであります。
よって,私どもは,貴殿らの名誉を著しく毀損したことに対し,謹んで陳謝の意を表するとともに,今後二度とこのような誤りを犯さないことを誓約します。
平成年月日
株式会社講談社
代表取締役 野間佐和子
「週刊現代」編集長
出樋一親
大川清幸殿
伏木和雄殿
黒柳明殿
(別紙)
謝罪広告7
謝罪広告
私矢野絢也は,「週刊現代」平成17年8月13目号(同年8月1日発売)に「公明党OB議員からの提訴は笑止矢野絢也氏が『手帖強奪』の真相激白」との見出しのもとに掲載された記事に関する「週刊現代」からの取材に対し,貴殿らが,4回にわたって私宅を来訪し,その都度,執拗な,強い要求を行い,私が「プライバシーの侵害になる」と強く抗議したにもかかわらず,手帖などを無理矢理に持ち去甑私の強い抗議にもかかわらず,手帖などを探すために家探しを2回にわたって強行したことも事実であると,あたかも,貴殿らが,強要,恐喝もしくは強盗の犯罪行為を行って私の手帖を強奪したとの印象を与えるようなコメントをし,これが上記「週刊現代」に掲載されました。
しかしながら,このコメントは全くの虚偽であり,貴殿らの名誉を著しく毀損するものであります。
私は,貴殿らの名誉を著しく毀損したことに対し,謹んで陳謝の意を表しますとともに,今後二度とこのような誤りを犯さないことを誓約します。
平成年月日
矢野絢也
大川清幸殿
伏木和雄殿
黒柳明殿
(別紙)
物件目録
1昭和42年及び昭和43年の能率手帳 各1冊
2昭和46年及び昭和47年の能率手帳 各1冊
3昭和48年ないし昭和51年の能率手帳各年分 各2冊
4昭和52年ないし昭和55年の能率手帳各年分 各3冊
5昭和56年の能率手帳 4冊
6昭和57年及び昭和58年の能率手帳 各5冊
7昭和59年ないし昭和61年の能率手帳各年分 各6冊
8昭和62年の能率手帳 5冊
9平成6年,平成7年及び平成9年の能率手帳 各1冊
10昭和43年の「hi−Start」と題されたリングミニノート 3冊
11昭和44年の参議院手帳 1冊
12昭和44年の「diary68」 1冊
13昭和44年の「69」というラベルが貼付された手帳 1冊
14昭和45年の衆議院手帳 1冊
15昭和45年の「NEWPET」と題されたノート 1冊
16昭和45年の「70」というラベルが貼付された手帳 2冊
17昭和46年の「71」というラベルが貼付された手帳 1冊
18昭和48年の衆議院手帳 1冊
19昭和53年の文化手帖 1冊
20昭和63年の表紙右肩に「1988」と記された手帳 4冊
21平成元年ないし平成4年の「Perfectimer」と題された手帳各1冊
22平成5年の衆議院手帳 1冊
23平成8年の「3Yea「Diary」と題された手帳 1冊
24平成10年ないし平成16年の衆議院手帳 各1冊
25平成12年の表紙右肩に「2000」と記された手帳 1冊
26昭和59年,昭和60年及び平成元年のメモ帳 各1冊
ただし,いずれも被告矢野が肉筆で記載した記入があり,茶封筒又は段ボール箱に密封して収納され,原告らが平成17年5月15日,同月17日及び同月30日に被告矢野宅から持ち去ったもの
(以上)